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『繁忙期のタイヤ屋さん』で四苦八苦の十句(Part2)
2025-10-17
俳句のわかる方、添削を希望します。
七竈の実の数ほどの感謝かな
【季語】 七竈の実(ななかまどのみ)
七竈が真っ赤な実をつけてロードサイドを鮮やかに彩る頃、北国のタイヤショップは繁忙期に入ります。
繁忙期は「ありがとう」という言葉で溢れます。
我々からお客様に。お客様から我々に。
一本の木に数えきれないほどくっつく七竈の実のように、感謝とタイヤで溢れかえる時期。
ちなみに七竈は苫小牧市の木として制定されています。
ばった飛ぶタイヤどうんと跳ねたせい
【季語】 飛蝗(ばった)
タイヤが100本単位でぞくぞく入荷するなか、トラックピットにばったが一匹。
「お、珍しいな」
写真を撮ろうと携帯をかまえたら、アルミコンテナから落とされたタイヤの振動が伝わり、びっくりして遠くへ飛んでいっちゃいました。
桐一葉落ちたる音で機械逝く
【季語】 桐一葉(きりひとは)
日々、文句も言わず働く機械。
桐の葉が地上に落ちるように、静かに、乾いた音をひとつ最後に発して、突然動かなくなりました。
忙しいときに限って壊れる機械・・・どの業種にもある「繁忙期あるある」。
俳句は五七五の十七音、有季定型、そのとき感じたことを写真のように切り取り、景に託して詠む。
季語があくまで主役。
まだ、三句目。
秋雨に濡れてきのふの仕事から
【季語】 秋雨(あきさめ)
明日やろうと見送った昨日の仕事から始まる今日。
そこへ天罰のように秋の雨が降ってきました。
がんばって、昨日のうちに終わらせておけばよかった・・・。
秋の雨は冷たくて、侘しさも募ります。
そんなことの繰り返しです。
秋の虹消ゆまでとする小休止
【季語】 秋の虹(あきのにじ)
夕方、雨上がりの東の空。
ひときわ大きく架かる秋の虹を口実に、タイヤを転がす手を一旦止めて。
ほんのひとときでいいので、小休止させてください。
はい、大丈夫です。すぐに作業を再開しますので。
秋の虹は、あっという間に儚く消えてしまいますから。
除雪車の身の丈ほどのタイヤかな
【季語】 除雪車(じょせつしゃ)
除雪車輛のタイヤ交換も、この時期の風物詩。
とにかく迫力満点! でかっ、ふとっ、おもっ!!
やいのやいの言いながら、バラして組んで取り付けて。
わが指の汚れ見し客みて愁思
【季語】 愁思(しゅうし)
お釣りをお渡しする私の汚れた指を見ているお客様のことを、私も見た、そんな私をまた誰かが見て。
終わりが見えず、循環する愁思。
俳句自体を、タイヤのような円環構造にしてみました。
タイヤのブラックカーボンて、いくら洗ってもなかなか落ちないんです・・・申し訳ございません_(._.)_
寒暁や宵積み車輛ぎいと哭く
【季語】 寒暁(かんぎょう)
繁忙期の最中のまだ陽も昇らぬ、寒くて真っ暗な冬の朝であろうと。
パンクで困っているお客様に呼ばれれば、眠い目をこすって緊急出動します。
朝一番に荷物を運ぶために、前もって積荷された「宵積み車輛」の下に潜り、ジャッキアップすると、冷え切った車輛が「ぎい、ぎい、」と鈍く呻き出します。
そりゃあそうだ、寒いし、眠いのはお互い様か。
夜明けは近い。
今日の仕事はこれから始まります。
倉庫ごと冴ゆるタイヤを崩しけり
【季語】 冴ゆ(さゆ)
冷凍庫のごとく冷えたタイヤ倉庫内で、高々と積まれたコールドスリープ状態の新品タイヤたち。
一本一本崩すと、地面に落ちたときの音まで冷たく響きます。
タイヤは、装着して路面を転がり、その性能を発揮してはじめて目的を果たし「活きたタイヤ」へ変わります。
わたしたちが相手をするのはそういう、温度を得た活きたタイヤです。
そういった意味で中古タイヤより、まだ命が吹き込まれる前の新品タイヤのほうが、より冷たく感じたりします。
宵雪や小店に待つ身待たせる身
【季語】 宵の雪(よいのゆき)
繁忙期においては、お客様が「待つ身」、我々が「待たせる身」です。
待たせることが気にならない図太さがあれば・・・いやいや「少しでもお客様をお待たせしないように精一杯取り組む」ほうが私らしいし当店らしい。
時刻は宵となり、予報通り小雪が空から静かに降ってきました。
我々を急かす雪ではなく、頭を冷やし心を閑にしてくれる雪です。
作業においては、慌ててやるのと素早くやるのは違います。
効率よくスピーディーに、正確に作業を進めていこう。
でもやっぱり、待つのも、待たせるのも嫌いです。
俳句をつくると、偏った主観が一度客観へと変わり、ふたたびその主観を捉え直して整えることができます。
いつも、「忙しい」とか「大変だ」とか大騒ぎしている浅はかな我々がそこにおり、滑稽に思います。
当店におだやかな日々が訪れるまで、まだしばらくかかりそうです。
ささ、がんばって仕事仕事!!!
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